研究概要 |
本年度は、抗癌剤ならびに放射線に対する感受性および耐性に関連する候補因子を口腔癌培養細胞に対する抗癌剤感受性試験ならびに放射線照射後の生存曲線との関連からマイクロアレイ解析を用いて検索した。 対象は頭頸部領域由来の扁平上皮癌培養細胞株18種であり、これらの細胞に対しCD-DST法にてCDDP, CBDCA, MMC,5-FU, ADR, TXL, TXTに対しての感受性を評価した。さらに、これらの抗癌剤に対する感受性の相違が明らかであった7種の細胞株に関してマイクロアレイ解析(ABI, DNA Microarray 1700)を行い、遺伝子発現パターンを解析した。 その結果、従来、抗癌剤の耐性・感受性に関連していると思われる新規関連因子の候補を同定できた。 また、一方で、放射線感受性との関連が示唆され口腔癌治療の標的になり得るいくらかの分子のなかで、数多くの重要な情報伝達タンパク質の機能と安定性を調節する分子シャペロンで、腫瘍細胞の存続に関係するとされてきたHeat shock Protein-90に着目して放射線照射との併用効果について検討した。HSP90が正常細胞にも存在することで、HSP90を阻害する17-AAG(17-allylaminogeldanamycin)の正常細胞に対する障害性が懸念されたが、そのような所見は、みられず、17-AAGは、細胞周期におけるG1/S期停止に関与し、腫瘍特異的に細胞増殖を抑制した。放射線効果の増強に、関しては癌抑制遺伝子であるp53のstatusに依存する形で、野生型p53を持つ細胞では、著しい増強効果を示したのに対し、p53の変異型を持つ細胞では放射線増強効果は軽微であった。 以上の結果より、分子標的治療薬による放射線感受性増強の可能性が強く示唆された。
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