研究概要 |
口腔癌放射線治療によるDNA損傷に対するチェックポイント機構異常に関連し、放射線感受性との関連が示唆されるいくらかの分子標的剤と放射線照射との併用効果について検討した。標的分子は、上皮成長因子受容体(EGFR)、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)、Cyclooxygenase-2(Cox-2)、Heat Shock Protein 90 (HSP90)、腫瘍血管である。各々の分子標的治療薬として、Gefitinib (EGFR-TK inhibitor), Flavopirido1 (CDK inhibitor), Celecoxib (Cox-2 inihibtor), 17-AAG (HSP-90 inhibitor)、TNP-470(血管新生阻害剤)を用いて検討を行った。 その結果、Gefitinibにおいては、細胞周期におけるG1/S期ならびにG2/M期チェックポイント機構の制御とDNA-PKを介したDNA修復系の阻害による放射線効果の増強がみられた。Flavopiridolにおいても著しい放射線効果の増強とアポトーシス誘導が確認され、その機序としてATMを介したチェックポイント機構の制御が考えられた。Celecoxib,17-AGG, TNP-470に関しても放射線感受性の増強効果が確認されたが、細胞における標的分子の発現やp53の変異め有無あるいは血管誘導能により影響を受け、細胞間によって感受性の増強効果に相違を認めた。 以上の結果より、分子標的治療薬による放射線感受性増強の可能性が強く示唆された。今後、腫瘍の標的分子の状態による個別化を行い、適切な分子標的治療薬と放射線治療の併用をはかることが的確な治療法選択における重要な課題としてクローズアップされてきたと考えられた。 一方で、抗癌剤ならびに放射線に対する感受性および耐性に関連する候補因子を口腔癌培養細胞に対する抗癌剤感受性試験ならびに放射線照射後の生存曲線との関連からマイクロアレイ解析を用いて検索した結果、これらの放射線治療に対する感受性の相違が明らかであった7種の細胞株の遺伝子発現パターンでいくらかの抗癌剤の耐性・感受性に関連していると思われる新規関連因子の候補を同定できた。
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