腺様嚢胞癌(AdCC)は著明な浸潤増殖を示し、高頻度で肺などの遠隔臓器へ転移する。腺様嚢胞癌細胞の性状をin vitroで調べると、I型やIV型コラーゲンに対してよく接着し、また遊走性も亢進するといった結果が得られた。なお、インテグリンの発現は扁平上皮癌(SCC)細胞と大差はなかった。AdCCとSCC間で発現に大差を認めたのはウロキナーゼ受容体(uPAR)であった。AdCCをコラーゲン上で培養すると、細胞膜上でのuPARの発現は亢進し、uPARはα2インテグリンや裏打ちタンパクであるvinculinやpaxillinと結合し、接着斑を形成した。そこで、uPARのアンチセンスを導入するとコラーゲンによるAdCCの接着斑形成や遊走性の亢進は完全に抑制された。以上の結果からuPARは腺様嚢胞癌細胞の特徴的浸潤に強く関与しており、この分子の機能抑制は浸潤抑制法の一つになりうることが示唆された。
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