研究概要 |
(1)頭頸部領域に発生した13例の腺様嚢胞癌患者の生検材料においてNCAMの発現を免疫組織化学的に検索したところ,9例(69.2%)の癌細胞にNCAMに対する陽性所見を認めた.NCAMは腫瘍細胞の細胞膜に陽性反応を示し,腺様嚢胞癌組織中の篩状構造および管腔様構造において散在性,あるいは集蔟性に陽性細胞が認められ,特に神経周囲性浸潤した腫瘍細胞に陽性所見を認めた.その発現頻度と臨床病理学的因子との相関関係は特に認められなかったが,腺様嚢胞癌におけるNCAMの発現は高頻度であり,腫瘍の進展に大きく関与していることが示唆された. (2)唾液腺腫瘍細胞株HSGから自発的なNF-kBおよびCYLD遺伝子・蛋白発現を認めた.HSG細胞にTNF-aを作用させた際,遺伝子・蛋白レベルでNF-kBとCYLD発現の増強を認めた.さらにcimetidineを作用させた際,NF-kBタンパクの活性抑制を認めたが、CYLD発現に変化はなかった.今後,NF-kBの発現動態についてさらに検索を進める予定である.MTT解析において,10^<-4>MのcimetidineにてHSG生細胞数の減少を認めた. (3)ヒト正常神経細胞とHSG細胞を共培養したところ,共焦点レーザー顕微鏡にて高率に接着していることが確認できた.さらにHSG細胞に10^<-4>Mのcimetidineを直接作用させた上でヒト正常神経細胞を共培養したところ,HSG細胞がアポトーシスに陥ってしまった. (4)ヌードマウスにHSG細胞を播種・腫瘍形成した後,10^<-4>Mのcimetidineを作用させたところ,腫瘍組織の縮小を認めた. (5)13例の腺様嚢胞癌患者の生検材料においてCYLDおよびNF-kBの発現を免疫組織化学的に検索したところ,9例(69.2%)においてCYLDの、また8例(61.5%)においてNF-kBの過剰発現を認めた.CYLDの発現が検出されなかった症例においては、CYLD遺伝子に何らかの変異が起こった可能性を示唆している.現在まで2例の腺様嚢胞癌症例についてCYLDの全20exonの遺伝子変異の検索を終えているが変異は認められていない。今後、残りの症例についてもCYLD遺伝子変異の検索を行っていく予定である.
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