研究概要 |
(1)持続的圧縮刺激に対する歯根膜線維芽細胞と骨芽細胞の応答性の違い 実験材料としてヒト歯根膜線維芽細胞(PDL cell)および骨芽細胞様細胞株MG-63(OB)を用い、持続的圧縮力を負荷し、形態と生存率の変化、TUNEL法、caspase-3活性によるアポトーシス誘発を検出した。アポトーシス細胞の発現は、PDLではわずかだったが、OBでは時間および負荷依存性に増加した。これにより歯根膜線維芽細胞では圧縮力に抵抗性があり、一方、骨芽細胞はアポトーシスを引き起こすことにより、矯正治療による圧迫側の歯周組織のリモデリングにおいてなんらかの役割を果たす可能性が示唆された。 (2)RANKL遺伝子導入によるラット実験的歯の移動制御 ラット歯周組織への局所的RANKL遺伝子導入は、歯の移動の有無にかかわらず、破骨細胞の誘導を促進した。歯の移動時では圧迫側だけではなく、他の部位でも見られた。そして、RANKLの強制発現は、歯の移動を30-70パーセント増加させた。しかしその増強効果は経時的に減少した。これよりRANKLの発現は、歯の移動の初期に重要であり、後半の反応では他の因子が働いている可能性が考えられた。また、興味深いことにRANKL遺伝子導入だけでも歯が有意に移動した。 (3)超音波を用いた遺伝子導入法の検討 実験材料にヒト歯根膜細胞を用いた。超音波端子入力電圧は30Vrms,発生超音波はDuty50%,2000Pulse、照射時間は,10secとした。ナノバブルは、脂質ナノを自作して実験に供した(平均サイズ:355nm)。pEGFPを導入し、その発現を蛍光顕微鏡で観察した。また、ルシフェラーゼ遺伝子を用いてルシフェラーゼ活性の測定とMTT assayを行なった。その結果、超音波を用いた遺伝子導入法は、高い導入効率を示し、ナノバブル併用により、さらに高い導入効率を示した。
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