研究概要 |
感染性心内膜炎患者のデンタルプラーク(歯垢)および心臓弁置換術の際に摘出された疣贅組織からStreptococcus mutansの分離を試みた.その結果,同一人物における1組のS.mutansの分離に成功し,それぞれの性状を分子生物学的手法を用いて分析した.デンタルプラークから分離した18株のS.mutansでは,主要な表層構造物に変異は認められなかった.一方で,疣贅組織から分離された7株全てのS.mutansにおいて3種のグルコシルトランスフェラーゼが全て欠如していた.また,これらの血液分離株は数種の抗生物質に対して耐性を示した. 次に,循環器疾患の手術において摘出された組織中からDNAを抽出し,PCR法を用いてS.mutansの存在を検討した.心臓弁置換術の際に摘出された組織のうち約60%がS.mutans陽性であった.また,血清型を決定すると,口腔で最も多く検出されるc型の割合が極めて低いことが明らかになった.さらに,従来の分類に当てはまらない不定型が約1/4を占めた. その後,循環器疾患のため手術を受けた対象の口腔からデンタルプラークを採取し,S.mutansの存在を分析した.すると,約95%の対象がS.mutans陽性であった.それらの血清型の分布を検討した結果,循環器疾患患者のデンタルプラーグ中のS.mutansの血清型の分布は,健常者に認められる分布と著しく異なっていることが明らかになった.
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