研究概要 |
口腔のアセトアルドヒド測定法の疫学的研究への有用性の評価 同意の得られた九州大学歯学部の学生10名を用いて、5%グルコースおよび5%エタノール10mlで30秒間洗口させ、口腔に貯留した気相50mlをCNETカートリッジで捕集し、1mlのアセトニトリルで誘導体化したアセトアルデヒドを溶出して、液体クロマトグラフィーによって測定することで、既に確立してきたGC/MSを用いたアセトアルデヒドの測定方法と同等の精度が得られたことから、本測定法が疫学調査に応用可能であることが確認できた。 アセトアルデヒド高産生者の口腔に特異的な細菌の網羅的同定法の開発 当初、アセトアルデヒドを高産生する被験者の口腔細菌を培養し、各コロニーを単離して、エタノールからのアセトアルデヒド産生能を調べ、アセトアルデヒド産生が著しく高い細菌を単離して、細菌種の同定を行う予定であった。しかし、本法では口腔細菌を網羅的に調べることが困難なため、16S rRNA遺伝子のTerminal Restriction Fragment Length Polymorphism(TRFLP)法による網羅的な口腔細菌叢を開発して、アセトアルデヒド高産生の口腔に特異的な細菌叢のパターンを同定できる方法の開発に計画を修正した。本法では、試料を緩衝液に懸濁してジルコニウムビーズで物理的に破砕し、抽出したDNAを鋳型として、細菌に共通した16S rRNAの遺伝子の普遍的な塩基配列をプライマーとして、試料中の全細菌種から16S rRNA遺伝子を増幅する。16S rRNAには各細菌種に特徴的な特異配列があり、増幅されたDNA断片には種々の特異的配列が混入している。そこで、ヘテロなPCR断片の混合物の解析を行うため、一方のプライマーを蛍光標識して、HaeIII,AluI,BstUI,MspIの4種の制限酵素で切断した後、蛍光プライマー側の断片長をキャピラリー電気泳動で測定した。結果をRibosomal Database Project II(RDPII)のデータベースに登録されている5万種類の細菌の16S rRNA遺伝子情報と比較することで複雑な口腔細菌叢を構成する細菌種を短時間で同定することが可能な網羅的解析法の開発に成功した。
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