研究概要 |
口腔機能としての味覚および温度感覚は,味覚検査試薬(甘味:スクロース,塩味:塩化ナトリウム,酸味:酒石酸,苦味:塩酸キニーネ)の濃度を倍数希釈列で変化させ,かつ温度を5,15,30,45,55℃に維持した試薬を用い,全口腔法にて検査するシステムを確立し,20歳代成人有歯顎者(17名)にて実験を行った。その結果,甘味で試薬の温度上昇に伴って検知閾値及び認知閾値ともに低下する傾向を,塩味と酸味で温度上昇に伴って検知閾値は上昇するが認知閾値は変化しない傾向を,苦味で温度上昇に伴って検知閾値は変化しないが認知閾値が上昇する傾向を認めた。 舌運動機能は,被験食品(5g)を習慣性咀嚼運動の1回嚥下を被験運動とした際の,舌圧を口腔環境に対する侵害を最小とする全口蓋床に圧力センサPS1-KC(共和電業社)を埋入して測定すると同時に,顎筋筋活動(咬筋浅部,顎二腹筋前腹,口輪筋,胸鎖乳突筋)を同時測定するシステムを確立し実験を行っている。その結果,20歳代成人有歯顎者(5名)では,嚥下時の舌接触時間が長く最大舌圧が高くなり,しかも口蓋後方で舌圧が大となる傾向を,その際顎二腹筋前腹及び口輪筋の筋活動が咬筋及び胸鎖乳突筋よりも大となる傾向を得ており,嚥下運動において口腔内を陰圧にするために口輪筋の果たす役割が重要になると推察している。 顎筋筋活動の検査においては,最大随意咬みしめ時の筋活動の結果の指標である最大咬合力に達する時間が20歳代成人有歯顎者(3名)で約450msecとの結果を得ている。 今後,各項目において分析項目を増やし,40歳代成人有歯顎者,高齢有歯顎者および高齢総義歯装着者のデータ採取を行い,20歳代成人有歯顎者のデータと有意性の検討を行う予定である。
|