研究概要 |
本研究は、熱布による腰背部温罨法が、自立神経刺激を介して腸の運動を整え、日常生活行動上の排便・排ガスにおける困難(便秘・下痢またはガスによる腹満等)の解消に有効であり、かつ気持ちよさをもたらす看護技術であることを明らかにすることを目標としている。本年度は、A.便秘・ガスによる腹満または下痢の患者での事例集積、B.罨法材料の開発、C.貼付部位の選択、D.便秘の自覚がある健常者での実験研究の準備を行った。 事例研究(A)では、4ヶ所の実践現場との協働研究を行い、計24例(脳血管障害患者13例、神経難病5例、透析患者6例)の事例を収集した。脳血管障害後で浣腸を定期的に行っていた事例で、自然排便が見られた例や、下剤を服用し下痢になっていた透析患者で便が形をなすようになった例等、効果がみられる事例が集積された。 温熱刺激が、乾熱か湿熱か、腹部貼用か腰部貼用か、温熱刺激の適切な温度等について(B,C)は、(1)湿熱の方が熱の伝導が広く深い、(2)腹部より腰部へ貼用した方が、胃腸の運動が促進される、(3)40℃湿熱で5時間腹部貼用にても、腹部の不快症状に改善が見られ、50℃乾熱で90分の腰部貼用でも、下痢の改善が見られたことから、皮膚温が40℃程度に上昇することが刺激になっている可能性が示唆された。また、40℃の温熱刺激時の瞳孔反射の反応から、交感神経活動の抑制と副交感神経活動の促進が推察された。 以上から、「熱布による腰背部温罨法」の方法は、原則として湿熱、皮膚温を40℃以上にできる、腰部への貼用が明確になってきた。そこで、便秘の自覚がありかつ日本語版便秘尺度で便秘のある女性健常者を対象に40℃5時間貼用と60℃10分貼用との比較実験を計画し、現在プレテストを実施している(D)。
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