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2004 年度 実績報告書

ヤシュニヤ(セルビア)聖ヨハネ修道院聖堂壁画の研究

研究課題

研究課題/領域番号 16401003
研究種目

基盤研究(B)

研究機関岡山大学

研究代表者

鐸木 道剛  岡山大学, 文学部, 助教授 (30135925)

研究分担者 木戸 雅子  共立女子大学, 国際文化学部, 教授 (10204934)
吉松 実花  大阪大学, 大学院・文学研究科, 助手 (40346151)
キーワード国際研究者交流 / セルビア・モンテネグロ / 美術史 / 中世史 / 壁画 / イコン / キリスト教 / ビザンティン帝国
研究概要

平成16年9月に、共立女子大学の木戸雅子教授とともにヤシュニヤ修道院に滞在して、現地調査を行った。セルビア芸術科学アカデミーのゴイコ・スボティチ教授が同行した。調査に先立っての修復は、ベオグラード芸術大学のサマルディチ助教授が中心となって大学院生8名によって進行中で、既にアプシスの北西柱の南面においては、クリーニングによって、赤く塗られていた壁面から1524年制作の聖人像が現れてきた。またアプシスの北壁の高位聖職者の肖像も、その当初の顔立ちがわかるようになってきた。ナオスの南壁においても洗浄によって多くの箇所で1524年の様式が見えるようになってきた。その様式は線描が強調されるもので、解体途上にあるが、輝かしい14世紀初頭のパレオロゴス朝美術盛期の様式の名残も感じることができる。またそこに早くも正教世界の盟主となったロシアの図像の影響が見られる可能性もある。
ロシアとの関係については、1557年にセルビア人画家ネクタリエが、リトアニアのスプラシュルで聖堂壁画に従事していたことが参考になる。バルカンと北方との交流は、想像以上に盛んであったのであり、スプラシュルにおけるネクタリエの様式は、ヤシュニヤの壁画の様式と極めて近似しており、スプラシュルにおいては、ビザンティン帝国滅亡の後、西欧の圧倒的な影響と圧力のなかで、スラヴ人が自らのアイデンティティを求め、セルビア画家を雇用したものと思われる。
ヤシュニヤからの帰路、アテネにおいて、同時代のギリシアのポスト・ビザンティン美術についての研究状況に関して、アテネ大学のカロピシ=ヴェルティ教授と情報交換を行い、ポスト・ビザンティン美術の研究のパースペクティヴを得ることが出来た。1527年にはクレタのテオファネスの活動が始まり、ポスト・ビザンティン世界のイコンと壁画はいわばテオファネス様式一色となる。ヤシュニヤの壁画はテオファネス以前のポスト・ビザンティンの様式を示す一例であり、ビザンティン世界はその後再び神秘化するのか、それとも合理主義の西欧と同じく、神秘化はいわば「遊び」として、相対的に把握されていたのか、バルカンのポスト・ビザンティン絵画の研究は、中世ビザンティンのイコン論が如何に近代においても有効であったかを理解させるであろう。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2005 2004

すべて 雑誌論文 (3件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 中世イコンの発見と現代2005

    • 著者名/発表者名
      鐸木道剛
    • 雑誌名

      ノートルダム清心女子大学キリスト教文化研究所年報 発表予定(印刷中)

  • [雑誌論文] 語り出す像2005

    • 著者名/発表者名
      鐸木道剛
    • 雑誌名

      岡山大学文学部プロジェクト研究叢書 発表予定(印刷中)

  • [雑誌論文] バルカンの一隅から2004

    • 著者名/発表者名
      吉松実花
    • 雑誌名

      民族芸術学会会報 64

      ページ: 3

  • [図書] バルカンを知るための65章2005

    • 著者名/発表者名
      鐸木道剛
    • 出版者
      (印刷中)

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公開日: 2006-07-12   更新日: 2016-04-21  

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