研究課題/領域番号 |
16401005
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研究機関 | 武蔵野美術大学 |
研究代表者 |
朴 亨國 武蔵野美術大学, 造形学部, 助教授 (00350249)
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研究分担者 |
加島 勝 東京国立博物館, 事業部教育普及課, ボランティア室長 (80214295)
津田 徹英 東京文化財研究所, 美術部, 文部科学技官 (00321555)
水野 さや 大東文化大学, 国際関係学部, 専任講師 (10384695)
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キーワード | 韓国 / 四仏 / 五大明王 / 四天王 / 八部衆 / 慶尚道 / 京畿道 / 仏教 |
研究概要 |
「韓国に仏教浮彫像の研究-四仏・五大明王・四天王・八部衆を中心に-」と題し、平成16年度から18年度の三ヶ年にわたる研究の最終年度である。6月、7月の二回にわたり、韓国国内の対象となる作品の実地調査を行った。まず、6月は国立中央博物館所蔵作品について、四仏・四天王・人部衆・五大明王の各像をあらわす石像および金属工芸品を中心にデジタルカメラによる撮影と調書の作成を行い、制作年代の検討および図像的特徴を確認した。7月は慶尚北道・南道において研究対象となる石仏・石塔について調査・撮影を行うとともに、道内の国立および市立博物館、大学博物館、寺院の宝物館に所蔵される金属工芸品の中から、五大明王、梵釈四天王像をあらわす金剛鈴、舎利容器などの作品を中心に同様に調査を行った。また、昨年度までの資料との比較を行うことで、本年度の調査においては主に次の点において成果を上げることができた。 第一に、国立中央博物館および慶州博物館に所蔵される感恩寺址東西三層石塔出土金銅製舎利荘厳具について、制作年代の差を明確にしたことである。従来、ともに統一新羅682年の制作とされており、西塔分が国立中央博物館に、東塔分が国立慶州博物館に分置されていることもあって両者の比較調査は困難になっていることもある。しかし、今回、四天王像をあらわす両塔の外函を詳細に比べたところ、まず、四天王像の図像的な点においても、様式的な点においても両者の作風の違いは明らかであり、また、金属工芸技法の観点からも、箱形の組み合わせ方、特殊塵の打ち方など歴然とした相違点が見出された。総じて、682年頃の制作と判断されるのは西塔出土舎利具であり、東塔は八世紀に下るものと推測された。今後、感恩寺の沿革と照らし合わせ、より、詳細に検討を行いたいが、韓国における最古の双塔形式の伽藍を誇るといわれた感恩寺において、創建当初の伽藍配置などの点も含め、波及する問題は少なくないと思われる。 第二に、韓国において八大明王の最古作例を見出したことである。これまでに韓国における五大明王の受容と変容について、京畿道博物館、国立清州博物館、東京国立博物館などの作例を通して図像的特徴を明確にしてきたが、その成果を国立慶州博物館所蔵石塔塔身部材(部分)と比較考察を行ったところ、八大明王の初期的な作例であることがうかがえた。八世紀に制作された本作品が中国に現存する人大明王像より遡る結果となり、明王像の初期的な図像形成の過程を明らかにすることができる好資料となった。 以上のように、韓国における仏教集合尊像を通して浮かび上がる数々の問題点は、韓国国内にとどまるものではない。その解明は、韓国のみならず、中国における各尊像の形成と図像の発展、日本における図像の受容と変についても一石を投じることができたと思われる。
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