9月ロンドンの大英国書館、パリの国立公文書館、ハレ大学(ドイツ)の図書館・博物館を訪れ、18世紀以降西欧人によって出版されたテルグ語の文法書・辞書とそれに関連する資料を収集した。今日のテルグ語文法・辞書のもとになっているのは19世紀イギリス人の手によって書かれた辞書と文法書だが、記録によるとそれらに先立つフランス語・ドイツ語のものがあるはずであった。今回の調査でははじめてそれらの現物と中身を確認すること、および外国人によるテルグ語学習の歴史の中での自分の仕事の位置づけを明らかにすることを目ざした。今回得られた成果は次の3点である。 1 イギリス人の証言とは異なり、彼らのテルグ語研究がフランス人の研究から大きな影響を受けていたこと、また今日の外国語教育でも見られる辞書・文法書の基本的形式が、イギリス人の研究以前にすでにある程度確立していたことが分かった。 2 フランス人のテルグ語文法・辞書の原本が実際にはひとつではなく、複数種類作られていたことを発見した。これらはまだ研究者が利用していない貴重な史料である。 3 ドイツ人によるテルグ語文法書・辞書は最古のものだが、内容的にはフランス人のものよりも劣っており、歴史的価値はあっても言語学的な価値には乏しいことが分かった。 年度初めの研究計画ではインドでもフィールドワークを行う計画だったが、ヨーロッパ滞在を長くとったため旅費が足りず、実現しなかった。制作中の文法書の原稿に関しては、日本に在住の言語学者や専門家の力を借りて校正を加え、またそれを学部授業で用いて学生の反応を見ながら問題点を抽出するといった繰り返しを行い、数回リヴァィズされた。語彙集に関しては、文法書の校正に伴ってたびたび方針が変わったため、確定的なプログラムに載せるところまで行かなかったが、基本的なデータベースは完成間近である。
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