1)2007年度は、この研究プロジェクトの締めの年であった。それまで収集した資料を点検し、論文執筆のために重要であると分かった部分を再調査、確認するため、ワシントン、ロンドン、中国、韓国、日本の主要図書館、資料館、研究機関をたずねた。植民地統治に関する資料は、日本国内に90%程度、諸外国に10%程度残されていることもわかった。 2)この研究は、満州、台湾、朝鮮など3つの地域、すなわち、完全に日本の植民地統治を受けた地域(満州は少々ことなるが)のジャーナリズムの全体像を明らかにすることであるが、満州地域におけるジャーナリズムについては、基礎研究をほぼ終えていたので(拙著『満州における日本人経営新聞の歴史』凱風社、2000)満州地域の研究調査では、新聞と統治の関係にしぼり、朝鮮と台湾は新聞活動に関する史実解明に重点をおいた。 3)研究が進むにつれ、新聞経営においても朝鮮と台湾を同時に論じることも、比較するこことも難しいことが判明した。そこで、2地域を分離し、3段階に分けて研究を進めることにした。すなわち、朝鮮を先に、台湾はそのあとに、最後に3つの地域を比較する。 4)調査研究と平行して2007年度は、植民地朝鮮の新聞史研究では最も優れた著作と言われる鄭晋錫の本(『大韓帝国の新聞を巡る日英紛争』晃洋書房、2008.5)を翻訳出版、「植民地統治と新聞」(角川出版、2008年度内に出版予定)を執筆しはじめている。この本は、おもに朝鮮における日本人経営新聞の歴史を明らかにするものである。 5)これからの課題として、(1)台湾の日本人経営新聞の歴史研究、(2)満州、朝鮮、台湾における代表的な新聞3紙の比較研究(3地域の植民地統治スタイルと新聞性格との関係性)(3)日本統治下アジアジャーナリズムの総合的な評価と記述など課題を残している。4年にわたる調査の蓄積、集められた資料を糧に、今後に研究につなげていきたい。
|