研究概要 |
本研究の目的は,戦前期南洋に着目しながら沖縄県出身移民の実態を明らかにするところにある。4年計画の1年目である本年度は,1.南洋に関する資料収集,2.南洋帰還者のデータベース作成,3.現地調査の実施,4.南洋帰還者への聞き取り調査の準備,を行った。 具体的には,米国議会図書館で南洋庁コレクションの所在を確認するとともに,米国公文書館で戦闘終結後に設置されたフィリピン・ダバオの捕虜収容所の収容者名簿を発見・複写した。また,沖縄県の海外引揚者の実態を市町村および町丁字レベルから把握することを念頭に,沖縄県庁が所蔵する約1万3千人の情報が記載された「引揚者在外事実調査票」の書き写しを行い,次年度以降のデータベース化に備えた。現地調査では旧ポナペ島と旧トラック諸島に赴き,現地住民から当時の日本人と現地住民との関係について聞き取りを行った。 さらに,引揚者への聞き取り調査に利用することを念頭に,GISを用いて南洋の日本人街や農園などの景観復元を行うための基盤を整えた。具体的には,南洋群島地形図のデジタル化を行うとともに,これまでに作成された復元地図や空中写真のGIS化のために,沖縄県出身移民であった慰霊団メンバーとともにマリアナ諸島を訪問しGPSを用いて戦前期の残存建築物の位置情報を取得した。特にサイパン島では,戦前期に日本人によって建立されたとされる「八十八箇所」の石仏について,GPSを用いて位置を同定した。同様の手法をフィリピン・ダバオに応用すべく,戦前期に作成されたダバオ市街の地形図および1945年前後の市街地や農園が撮影された空中写真の所在を米国公文書館にて確認し,一部を複写することで次年度以降に備えた。なお,南洋の旧日本人街に関する研究集会を開催し,景観復元についても意見交換を行った。
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