研究概要 |
本研究の目的は,戦前期南洋の地域形成に着目しながら沖縄県出身移民の実態を明らかにするところにある。4年計画の2年目年である本年度は,昨年度に引き続き戦前期南洋に関する資料調査・収集,データベース化,および移民居住地域の景観復元のための資料収集を行った。 具体的には,米国公文書館などにおいて外南洋(東南アジア地域)では最大の日本人居住地域であり,その半数を沖縄県出身者が占めたフィリピンのダヴァオについて,当時のマニラ麻(アバカ)栽培の実態に関する資料とともに,アメリカ軍および旧日本軍が作成した当該地域の当時の地図等を複写した。また,外交資料館では,これまでその存在が注目されてこなかったダヴァオ居住者や日本との移動について推察可能な「外国旅券下付出願ニ要スル在外公館発給各種登録証明交付人名表報告雑纂」についてデータベースを作成すべく一部を複写した。 また,ニューカレドニアの首府ヌーメアでも地図・測量局や図書館で当時の様子を窺い知ることのできる地図・資料等を収集するとともに,現地においても当時の主要施設が現存するのかを確認した。さらに,ニューカレドニアではツホのニッケル鉱山跡や鉱山集落跡地を確認するなど,次年度の本格調査に取り掛かかるための予備調査を行った。さらに,南洋移民関連資料を多数所蔵するハワイ・ハミルトン図書館にて,当該関連資料を収集するとともに,沖縄系移民個人が所蔵する録音テープや貴重書類などの資料も収集した。加えて,マーシャル群島ではマジェロおよびヤルートでは,現地住民から日本人移民についての聞き取りを行うとともに,居住地跡などについて記録した。こうした作業は,戦前期南洋の市街地等を復元し,日本人移民がどのように地域形成に関与していたのかを解明する重要な手がかりとなるものである。
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