本調査の開始にあたり、共同研究者と研究協力者による研究課題についての集中的討議を目約に、スリランカから研究協力者3名、国内滞在中のスリランカ、米国の研究者2名を招聘し、ワークショップ「スリランカ社会・文化の変容と未来:和平構築に向けて」を一橋大学で行った(2004年7月)。外務省南西アジア課と国際協力銀行からの担当者の参加を得て、学術研究者と実践面の専門家を中心にした分析と討論を行うことができた。翌日、現在のスリランカの平和構築・紛争解決と予防にむけた提言を日本の関係諸機関とNGOに行い、実践的活動の関係者と学術関係者の情報の共有と協力関係を作るために、招いた公開シンポジウム「変容するスリランカ社会・文化と平和構築」を行った(総合司会;足羽)。 その後、足羽はスリランカ政府とLTTEの仲介役であるノルウエーにおいて、人類学による和平貢献の実績をもつクリスチャン・マイケルセン・インスティテユートの活動状況の調査を行った(同年11月)。スリランカでは研究協力者とともに東部の和平状況について調査を行った(同年12月)。また共同研究者の中村はスリランカの北東部を中心に経済復興プランの検証と津波の被害状況の調査を行った(同年12月〜翌年1月) 年度別予算配分の割合が当初の計画と異なり初年度が高かったため、次年度に予定していたスリランカでの会議をくりあげ、文化と平和関係の専門家10名による公開の会議"Culture for Understanding ; Towards Peace of Sri Lanka"(議長:足羽、Fernando)をコロンボで行った(2005年2月)。本会議では経済と政治関係のみから議論されている和平構築プロセスと復興支援に対して、長期的な和平構築のためには、新たな平和に向けた文化の力の重要性が確認できた。
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