研究課題/領域番号 |
16401029
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
足羽 與志子 一橋大学, 大学院・社会学研究科, 教授 (30231111)
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研究分担者 |
中村 尚司 龍谷大学, 経済学部, 教授 (50172424)
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キーワード | スリランカ / 平和構築 / 紛争解決 / 文化政策 / ポスト・コンフリクト / 記憶と表象 / 民族対立 / 平和への文化 |
研究概要 |
平成17年度では、スリランカのマータラ大学とスリジャヤワルダネ大学の協力を得て、足羽は2地域の平和意識調査を行った。南部マータラでは、シンハラ仏教徒の現状認識が示され、3年前の数値との比較において、政治的紛争解決への期待と関心が薄れ、経済発展への高い期待とそれが達成されない失望感が強いことが確認された。また他民族のタミルやタミル語についての関心も落ちていた。停戦協定の長期化につれ、停戦状態の日常化が進み、現状では不都合が少ない多数派シンハラが政治的解決の関心は低い。異なる民族が混住する首都近郊ヌゲゴダでの調査では、従来の国家統一論が再び支持を集め、北部・東部の危機的状況の知識、知識欲、危機感の共有がないことが示された。両調査の詳細な分析は平成18年度の報告書としてまとめる。いっぽう、紛争地域の北部ジャフナ、東部バティカロア、ワウニヤでの大統領選挙状況の観察では、LTTE側が選挙のボイコットを間接的に指導し、大統領選挙に直接的影響を及ぼしたことを観察した。LTTEの戦略的行動様式は、二大対立政党の対立が招く政府側のアドホックな政策や言動と対照的であり、指導者と方針が短期間に変わり、政策立案、施策の実行力に乏しい政府と、武力も含めた多様な手段と強い中央の意志決定により行動を決めていくLTTEとに著しい差がある。中村はクウェートとアラブ首長国連盟におけるスリランカからの出稼ぎ労働者の実態調査を行い、両民族の出稼ぎ労働者の状況把握が立ち後れ、劣悪な労働条件であることを示した。スリランカでは過去の紛争への反省や和平構築への積極的な他者理解の実践が乏しく、正確な現状認識を欠いた多数派の現状維持的傾向が強い。民族や言語にまたがった正確で同一内容の一般向けの報道がないことが、その一因である。和平にむけた文化的再構築が国内・国外の機関のプロジェクトが育っていない。
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