本年度の研究目的は、現地農牧民の適応戦術の調査と、過去10年間の衛星画像によるプランテーションの拡大についての分析だったが、昨年度のフィールドワークで入手したデータを生かすために、画像分析に研究の焦点を絞った。用いたデータは、フィールドワークで収集したGPSによるデータ、およびエチオピアで購入した調査地域の地図データと、衛星画像によるデータである。衛星画像は、Landsatの76年1月、86年1月、89年12月、95年12月、2000年1月の画像、Spotの2005年1月の画像である。 89年にはすでにプランテーションの申請は行なわれていたはずであるが、衛星画像ではプランテーションを確認することはできない。95年の画像では、プランテーションはウェイト川に取水口をもち、幹線道路沿いに河辺林の後背地をおよそ1000ヘクタールにわたって開拓している。このころに現地住民ツァマコの反乱が起きている。2005年にはプランテーションの面積は95年の4倍に拡大し、ツァマコの集落とウェイト川を遮断するような形で広がっている。 昨年のGPSデータを2005年の衛星画像と組み合わせてみると、現在のツァマコの耕作地は、ひとつはプランテーションの東側の、まだ開拓されていない、ウェイト川沿いの河辺林の中に開かれ、もうひとつは、プランテーションの西側のへりに、プランテーションの運河の水を利用する形で形成されていることが明らかになった。
|