本年度は、綿花プランテーション近辺に居住するクシ系農牧民ツァマコの地域集団ウンチェテおまびドゥマの、プランテーション開設後の農耕・放牧パターンの変化、およびプランテーションに対する対応について、聞き取り調査を行なった。また町周辺に居住するツァマコを中心とする農牧民世帯約100世帯に対して、町周辺への移住の理由についてインタビューを行なった。 ドゥマの蜂起の前後に行なわれた調査報告は、プランテーションはツァマコの生態資源の利用や生態環境自体に、マイナスの影響を与えていると結論づけている。しかし今回の調査では、すくなくともプランテーション周辺に集まる農牧民世帯は、プランテーションとその周辺の「都市的」環境を、多様な形で利用していることが明らかになった。例えばドゥマの蜂起後、プランテーションと良好な関係を続けたウンチェテの住人は、プランテーションの提供する灌漑用水路を用いた畑に多くのプロットを持ち、裕福で経済的影響力のある住人として居住している。また首長の親族たちは、プランテーションでトラクターの運転手のような比較的恵まれたポジションについている。他方で伝統社会から脱落した人々(旱魃による故郷離散者、夫を失った女性、身体障害者、駆け落ちした若者など)は、町周辺で賃労働者や町住民への物売りとして、生活の再建を目指している。このように、出身地域・出身集団・出身社会内でのポジションにより、プランテーション周辺の環境利用には、明瞭な相違をみることができた。
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