研究課題
基盤研究(B)
本研究では、まずパプアニューギニア住民の独自の開発観について、いくつかの知見が得られた。まず住民は、開発の主体は「外部者」と認識していること、また開発は外部から付与されるものであると認識する傾向が強いこと、「外部」との非連続性が強く意識されていることがわかった。以上により、開発のために、住民「内部」からの主体的な努力が妨げられることになる。また、住民の継続的な努力の結果、「発展」が達成できるとは考えない傾向が強いために、住民の継続的な努力が妨げられることになる。「開発」は外から突然やってくるものと認識する傾向が強い。このような「開発」の認識は、開発を実践する際には大きな障害となると考えられる。第二に、開発に伴う現象として、住民の「文化」に対する認識において、変化が生じていることが挙げられる。開発的介入に伴い、当該社会の住民が開発する側の言説を借用し、主体的に自らの文化を主張する現象が生じている。また金などの発見により、土地の価値が認識され始め、こうした新しい「文化」「民族」意識と関連して、土地をめぐった対立問題が深刻化してきている。その一方で、これまでになかったあらたな`「民族」概念と、従来の「民族」概念とが共存し、混乱と相克が生じている。第三に、近代化、あるいはキリスト教の布教活動を含めた広い意味での開発的介入により、ジェンダー空間の変化が生じている。従来、男性の空間と女性の空間が厳密に分離され、それに伴う住民の行動も規制されていたが、ジェンダー的な区分の明確でない家屋構造が一般化するにつれ、住民の行動も伝統的な規制を免れる傾向が出てきている。
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