本研究課題は、法律、医療、科学技術に関わる学際分野であり、また、特許法の諸制度、法理論上の多くの問題と関わっている。これら多角的な観点から、アメリカ(カリフォルニア大学サンフランシスコ校メディカルセンター、同バークレー校)、イギリス(ケンブリッジ大学、ロンドン大学)、ドイツ(ミュンヘン大学、マックスプランク知的財産法研究所)、カナダ(トロント大学)での海外における文献収集、インタビュー等の調査、および、国内で行われた国際シンポジウム等への参加、インタビュー等をとおし、医療方法の特許、バイオテクノロジー関連発明特許の背後にある法的問題、技術課題(ソフトウェア関連発明、データベース、再生医療、バイオテクノロジー技術)、社会構造を、広く深く調査し、検討するよう努めた。 特に、医療方法の特許の保護を支えるクレーム解釈論、バイオテクノロジー関連発明の分野における物の発明と方法の発明の区別、欧州特許法およびコモンウェルスの特許法とわが国特許法の比較検討について大きな収穫があった。中でも、特許クレーム解釈に関する「特許侵害訴訟における禁反言の法理の再検討」は大きな成果であり今後の見通しが開けた。また、特許制度および著作権制度が財産的情報を保護しており、両法を相互に適用できるのかという視点から、3月までに、特許の間接侵害に関する論稿、著作権侵害の責任主体に関する論稿および講演を終了させるべく考察をすすめている。 今後は、本研究のとりまとめとして、5月までに均等論を中心とするクレーム解釈および医療特許・用途発明に関する文献収集および全体像を確定する。上述の法的、技術側面に関する国際調査範囲を継続しつつ一部拡張する。8月のシンガポール国際会議でパネリストとして招待されているため、それまでに報告書のめどをたてるとともに、欧米およびアジアの学者、判事から情報収集、インタビューを行なう予定である。
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