本共同研究では、2004年8月に、海外共同研究者である王朝才教授を通じて中国財政部・財政科学研究所の協力を得て、十分な予備作業を行うことができた。その結果、当初の計画のとおり研究調査を実施することができた。具体的な調査地域は、北京市所属の石景山区(とくに魯谷コミュニティ)、昌平県(とくに十三陵鎮)、河北省所属の来水県(とくに石亭鎮)、石家荘市(とくに鹿泉市)であった。現地調査を実施する過程で各地で様々な懇談の機会を得た。懇談会としては、とくに北京市財政局と来水県財政局で行ったヒアリング調査は意味深いものであった。聞き取り調査のほかに、数多くの資料収集も行った。特に財政部所属の出版社で重要な出版物を多く入手できた。この現地調査をもとに、10月以降、資料の分析を本格的に始めた。今回の研究調査で明らかになったものは、およそ以下の通りであった。中国の政府間財政関係では、2002年以降は再集権化傾向を強めている。また、中国では省・県・郷鎮という3層制の地方財政体制と省・県という2層制の地方財政体制が併存しているが、国庫の単一口座制度の施行によって、郷鎮の財政部門の事務がなくなる郷鎮も見られるので、郷鎮の財政部門の撤廃が可能になってきており、実際にも、郷鎮財政を撤廃して省・県の2層制の地方財政体制が普及する動きを見せる地域もある。経費においては、上位の政府による下位の政府への統制が強くなり、各種の使途指定の補助金のみならず、公務員の給料支払いさえも銀行を通して集中するようになっている。他方、このような財政統制の強化政策は、現在進んでいる市場経済化にふさわしいかどうかという疑問が残っている。平成16年度の研究成果は、研究代表者張忠任の下記の論文に既に一部組み入れているほか、2005年5月に張忠任と研究分担者内藤二郎は、日本地方財政学会第13回大会において、共同報告を行う予定である。
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