財産と所有に関する海外学術調査の初年度として、第一次調査を平成16年9月25日がら10月4日にかけて、マインツ・ヨーロッパ史研究所を拠点に、ライン下流地方の文書館等で行った。また、第二次調査を、平成17年2月20日から平成17年3月20日にかけて、ゲッティンゲン・マックスプランク歴史学研究所を拠点に、ヘッセン州立歴史学局等での調査を行った。この調査の目的は、第一に遺産目録の記載内容に関する調査、そして第二に新たな研究対象地の選定である。 1.ヴッパータールの遺産目録の記載内容について、日常史的民俗誌的研究についての調査を行い文献収集を行った。ただし、「遺産目録」一般について、公刊資料についての文献目録はあるものの、遺産目録の残存状況と地域史との関連についての体系的研究は存在しない。 2.特に今回の調査で明らかにされたことは、分割相続地域と一子相続地域において、歴史資料のあり方が決定的に異なることである。遺言書あるいは婚姻の際に遺産目録が体系的に作成されたのはドイツではヴュルテンベルク地方に限られる。つまり、財産の管理に関して全く異なるパターンがドイツでは確認できるということである。そこで、今後集中的に調査を行う地域の候補としては、同地方に隣接するヘッセン地方が最も適していることが確認できた。旧来から行っているライン下流地方についての検討に平行して、今後は、ヘッセンを中心に調査を行うことにした。また、他地域・他国家との比較検討も継続する。 比較検討のための情報収集を兼ねた学会発表に関しては、平成16年6月に日本ドイツ学会第20回総会シンポジウムにおいて、「マイクロスタディはドイツ研究に何をもたらすか」という表題で報告を行い、また、平成16年11月に、アメリカ合衆国シカゴで開催された第29回社会科学歴史学会では、死亡危機が与える財産継承・相続への影響についての報告を行った。
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