研究課題
本年は最終年度として、ヨーロッパと中国で補充調査を行った。とくにルーマニアの調査では、ブカレストの中心部で、都市の中心部で電柱の地中化をしていないなど、ヨーロッパの諸国のなかできわめてめずらしい街並みをみることができた、都市景観の表象分析を通して、英米型の<弱い官と強い民>、日本型の<強い官と弱い民>、中国型の<強い官と強い民>という姿が見られることを確認した。たとえば、日本は公的規制が多い社会であるといわれる。しかし日本の都市は街なみが雑然としているばかりか、電柱、看板などが林立し混乱している。これに対して、欧米は公的規制が少ないといわれている。しかし欧米の都市は電柱が埋設化され、看板も規制され街なみが整然としている。では、なぜ、こうした一見逆のようなことが起るのかを、日本と欧米と公共観の違いを通じて、明らかにした。中国は社会主義時代の伝統をへて、現在その中間ともいえる形態を見せている。とくに台湾は日本の植民地時代の影響が色濃くみられ、独特の公共観の発展を遂げていることから、日本と中国の公共観の違いを解くヒントを与えているように考えた。さらに、最近は日本や中国が政治改革や経済発展にともない英米型の公共観に大きな影響を受けるようになっていることを、都市環境の表象から研究期間を通じて収集した膨大な街並みの写真をもって明らかにした。本研究は日本・欧米・中国の<官-民>意識や<公-私>意識に焦点をあてることで、人びとの生活の内側から、各国における公共観に関する「相違」と「共通性」を解明したと考えている、さらにそれを通じて、人びとが自明の前提としている公共観を俯瞰するとともに、それを踏まえて次の時代に向けて、社会学理論を構築するとともに、街づくり、福祉、交通、などの分野に、新しい公共性のあり方を提言した。
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環境科学会誌 19-4
ページ: 309-318
比較法文化 15
ページ: 23-33
藝文研究 92
ページ: 169-180
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