4年計画の初年度に当たる本年は、来年末に実施予定の四都市調査を十全に行うための基礎的作業に従事した。 第一に、1997年〜99年にかけて実施された第一回四都市調査の結果を精査し、日本や他のアジア地域との比較を試みることによって、現代中国が抱える問題の特徴を明らかにする作業を行った(編著の刊行として実現)。 第二に、海外共同研究者の一人で中国と香港の比較を行う呂大樂・香港中文大学教授との集中的な討論を通じて、次回調査の重要ポイントを洗い出した。その結果、移動が日常となった現代中国でパネル調査を行うことは必ずしも最善の策とはいえず、むしろ同じサンプリング方法で同種の問題を継続的に問う、時系列調査を実施することに意味があるとする結論を得た。 第三に、中国での調査実施に責任をもつ潘允康・天津社会科学院社会学研究所所長との議論を通して、現在進行している中国での階層変動のポイントが農村からの都市流入をどう捉えるかであって、従来のような都市サンプルだけでの議論に厚みをもたせる必要があることを確認した。 第四に、こうした基本認識を踏まえて、天津市内の6区(南開区、和平区、河西区、東麗区、大港区、西青区)、1区ごとに100サンプルを採取し、都市住民が農村からの流入者をどのように受け止めているか、そしてこれに階層別の特徴が見られるかについての質問票調査を実施した。調査が終了したのが12月末であるから、現在その結果の分析を進行中だが、低階層ほど農村からの人口流入に対して敵対的な態度を示している傾向を見て取ることができそうである。 来年度は、この調査結果めぐって海外共同研究者と討論を行った上で、第二回調査に必要となる質問文の選択を行い、年度末に調査を実施する予定である。
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