最終年度にあたる2007年度は、従来の研究成果を取りまとめ、対外的な発信を行うことに最大のエネルギーを払った。 たとえば、中国社会学会第17回全国大会で"Two Types of Urban New Middle Classes in Confucian Asia?"と題する発表をし、アジア内部における中間層の2類型論を展開するとともに、今回のプロジェクトで得られた2時点データを利用して、東北大学の不平等研究拠点が主催したシンポジウムで"Social Inequality and Injustice in Developing China:Some Empirical Observations"と題する発表を行った。 また、11月2日には、中国の4都市で調査を担当した海外共同研究者4名を招聘し(上海大学の仇立平氏が都合で来日できなかったため、代わりに胡申生氏を招聘した)、早稲田大学現代中国研究所と共催で国際シンポジウム「中国の階層変動と都市ガバナンス」を開催、日本の中国研究者も含めて討論を行った。 これらの作業を通じて、最終的に確認できた現代中国の階層変動に関する知見は以下の通り。 (1)前回調査からも、学歴別にみた月収は格差が拡大している。また、収入格差に対して不公平だとする評価が高まっており、これが全体の社会的不公平感を強めている。 (2)しかし、学歴が社会的不平等を生み出しているという認識は強くなく、教育機会をめぐる不平等以上に、教育達成のもつ公平性・健全性が強く意識されている。 (3)富裕層は、1990年代の外資系企業・私営企業といった周辺セクターから2000年代の国家機関・国有事業体へとシフトしており、発展の「体制内化」が急激に進んでいる。そのため、学歴(文化資本)、権力(政治資本)、収入(経済資本)の独占状態が生まれつつあり、従来の社会主義体制を否定する力学が生まれている。
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