研究概要 |
本年度は,平成17年度「研究の目的」と「研究実施計画」にそって,以下の研究を実施した。 第一に,平成16年度の研究小括と海外調査準備のための研究会を立命館大学(草津市)で実施し,とくにメキシコとチリにおける研究成果を整理して,本年度調査の対象と方法を明確化した。 第二に,メキシコ,チリ,アメリカ合衆国において海外調査を実施した。 メキシコ調査においては,全国農業者販売協会等におけるヒアリングと資料収集によってNAFTAの下で展開してきた連邦政府の農業プログラムについて,とくに直接支払い政策の詳細について明らかにした。またプエブラ州農業者販売支援協会等において連邦政府直接支払い政策の州レベルでの展開について把握することと合わせて,特定農村においてNAFTA対応のために付加価値生産協同事業に取り組む農家調査を行ない,その存在形態を把握した。いっぽうハリスコ州においては,スペインからの資本と技術を導入してNAFTAを活用した対米輸出トマトを大規模に生産する多国籍事業体の展開実態を現地調査によって把握した。 チリ調査においては,多国籍企業等が輸出向け果実・野菜産業を組織化する具体的な形態について実態調査を行なった。そこから,多国籍企業等の輸出業者は農業生産について直営生産と契約生産によって組織化するが後者が主流になってきていること,果実・野菜の生産者に着目すると,技術者や企業化が輸出向け生産に参入して担い手になるタイプと,農地改革によって共同体的所有下の小農民となった生産者が土地の私的所有化にともなって再度両極分解して商業的経営が形成されて担い手になるタイプという二つの系譜の存在が析出され,それらにおける契約取引内容が明らかになった。 アメリカにおいてはカリフォルニア州の大規模酪農部門がNAFTAによる市場再編下でいっそうの構造変化と大規模化を進めている実態について把握し,またその地域別・出自(移民形態)別の特徴が存在することがわかった。 第三に,平成16年度,17年度の海外調査ならびに計量分析の結果を研究成果報告書として取りまとめた。
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