研究概要 |
平成17年8月30日〜9月21日に小嶋,大谷および研究協力者のThanhが,同年8月30日〜9月11日に板谷が,同年9月6日〜9月21日に永広が,インド,ラダックヒマラヤにおいて地質調査を行った.本年度は3年計画の2年目にあたり,平成16年度の概査結果を踏まえ,調査地域をレー,フンダル,タンツェ,シュヨク周辺の3箇所に絞って調査した.得られた成果は以下の通りである. 1.平成17年度の調査でジュラ紀アンモナイトを発見した,シュヨク地域のシュヨク縫合帯を構成する陸棚相石灰質泥岩層の詳細な調査と,追加の化石採取を行った. 2.インド〜パキスタンにかけてのインダス縫合帯からは深海成の地層として白亜紀の放散虫チャートが報告されているが,それ以前の深海成層は見つかっていない.本年度の調査で,インダス縫合帯のインダス累層基底部の礫岩中のチャート礫から,三畳紀後期およびジュラ紀中期の放散虫化石を発見した.このことは,現在は失われてしまっているが,かつてはインダス縫合帯に三畳紀〜ジュラ紀の深海成層が分布していたことを示しており,インダス縫合帯の構造発達史に大きな制約条件を与える. 3.フンダル地域に見られる,花崗岩から斑レイ岩にいたる様々な岩相のラダック深成岩類を採取し,現在放射年代測定を行っている. 4.タンツェ地域のカラコルム断層沿いに分布する花崗岩マイロナイトの解析より,断層活動は長い歴史を持つことおよびその歴史を通じて,変位センスは右横ずれであったことが明らかとなった.また,断層の両側のマイロナイトは変形様式が異なることから,全く違う条件下で変形したマイロナイトがカラコルム断層の大きなずれにより隣り合うことになったと推定される. 以上の成果は,2006年5月に開催される地球惑星科学連合2006年大会で報告予定である.
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