研究概要 |
本研究では,原生代のオフィオライトでは保存状態がよいことで有名なモロッコのボウ・アゼールオフィオライトの調査/研究を行って来た。ガブロに関しては露出面積も狭く,原岩の保存状態も悪く,当初の期待通りには研究を進める事ができなかった。また,今年度は,比較のために,白亜紀のオマーンオフィオライトの同等岩石も解析を行った。今年度の研究内容および成果は以下の通りである。 1.後期貫入岩体に相当すると思われるウェールライトを発見したが,蛇紋岩化の程度が極めて高く,今までの検討では残留鉱物を発見することが出来なかった。現在検討を続けている。 2.ボウ・アゼールオフィオライトのマントル部と周囲の岩石(特に,閃緑岩)の境界部に沿って,有名なCo-Ni鉱物(砒化物および硫化物)の形成が認められる。鉱物組み合わせおよび化学組成は多様であるが,Ni-monoarsenide→Ni-Co diarsenide→Ni-Co triarsenidesの晶出順序が読み取れる。これらの鉄族元素の起源とかんらん岩の蛇紋岩化作用との関連が予想される。 3.昨年度発見した蛇紋岩中の磁鉄鉱脈の生成の初期過程を示唆する,球状の磁鉄鉱集合体の面状配列が発見された。磁鉄鉱はコロイド状沈積物の組織を示し,鉄族元素の低温での移動集積を示唆する。この化学的特性は現在解析中である。 4.クロミタイトは極めてCr/Al比が高く,周囲の枯渇度の高いハルツバーガイトと整合的な性質を示す。また,Os, Ir, Ruに富み,Pt, Pdに著しく乏しい性質を有する。これらは,島弧的な環境で,高度の部分溶融が起きたことを示唆する。 5.原生代オフィオライトのマントルかんらん岩はより高枯渇度であるが,オフィオライトの構成は原生代〜顕生代で大きな差は認められない。
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