研究概要 |
以下の2つの目標を達成し、地球化学の研究が自然災害に関係する問題の解決にいかに有効であるかを実証することを目的として以下の成果を得た。 1,ニオス湖およびマヌーン湖のCO_2濃度の監視:西アフリカ・カメルーン火山列に属する火口湖のニオス湖とマヌーン湖は1980年代に「湖水爆発」を起こし、約1800名の死者を出すガス災害発生地として有名になった。研究代表者らによる災害後の調査・研究により次のことが明らかにされている。(i)マントル起源のCO_2が湖底から供給され深層水中のCO_2量は一定速度で増加し続けている。(ii)したがって再び湖水爆発する危険性が極めて高く、再びガス災害を招くことが憂慮されている。2001年にはニオス湖で、2003年にはマヌーン湖でそれぞれガス抜き設備が設置されたものの、ガス抜き速度は小さく、今なお多量の溶存CO_2が残存している結果、湖水爆発の危険性は未だ残されている。本研究では、2006年1月に両湖においてCO_2の定量および化学組成を把握するためのサンプリングを実施し、現在分析作業を実行中である。また、今までに得られている両湖の溶存CO_2の除去速度と天然の増加速度に基づき、ガス抜きに伴うCO_2残存量の将来予測を明らかにした。 2,ニオス湖ダムの年代学:マールであるニオス湖の北岸は固化不十分な火砕堆積物からなる高さ45mの天然ダムである。このダムは脆弱であり、かつ、風化により幅が狭くなりつつあるとされている。決壊した場合は遠くナイジェリアにまで到達する大洪水の危険性がある。本研究ではニオス湖ダム火砕堆積物の形成年代を正確に把握し風化速度を推定しダムの安定性を評価する。この目的のために、昨年度にニオス湖周辺の溶岩と火山砕屑物を綿密に採取し、それらの化学組成(微量元素ならびに各種同位体比を含む)ならびに年代測定のためにU-Th-Ra非平衡の有無を検討した。その結果、ニオス湖マールを形成した火山活動はマントルに根を持つ海洋島タイプの玄武岩によるものであり、形成年代は今から約5000年前であることが分かった。
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