研究課題
平成16年度は、ベトナムのホーチミン市内の洪水が頻発する地域において、洪水時に氾濫する汚濁河川中の感染性微生物に関する調査を行った。その結果、ホーチミン市内を流れる汚濁河川中の大腸菌やウイルス濃度は、日本の下水と同じ程度であることが確認された。平成17年1月から2月にかけて行ったジャカルタ市を流れる最大河川のChiliwung川沿いの洪水被害地域の調査結果を行い次の結論を得た。1)洪水被災地区の主な水源は浅井戸地下水であり、洪水により大腸菌などの汚染を受けていた。2)住居に流れ込んだ洪水は、そこに長時間にわたって滞留し、大腸菌などの指標微生物濃度も、Chiliwung川の濃度よりも高かった。3)洪水被災地域では、被害を免れた地域に比べて、下痢症などのほか、皮膚病やインフルエンザなどの罹患率が高かった。これらの結果から、ジャカルタのような沿岸大都市における洪水は、溺死などの直接的な被害に加えて、住民に長期間の避難生活を強いるうえ、健康被害も惹起していることが確認できた。平成17年度はホーチミン市内の洪水頻発地域において、ジャカルタと同様な調査を行い、洪水による健康被害を確認した。平成18年度はホーチミン市内を流れるサンゴン川流域とそこに流れ込む運河の水質及び底質の調査を行った。サンゴン川には河口堰はなく、潮位の変動を受けて流れの方向が大きく変化する。一方、ホーチミン市には下水の処理施設はなく、家庭排水及び工業排水は一部簡単な処理を受けただけで市内の運河へと排出され、それはやがてサイゴン川へと流れ込む。このため、潮位の変動により汚濁した水が逆流し、ホーチミン市の取水点まで到達していることが示された。今後、地球規模の環境変動により海面水位が上昇すると、ジャカルタやホーチミンなどの沿岸都市は、洪水が頻発し、汚濁した洪水により多くの健康被害が出ることが予測された。
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Southeast Asian Water Environment, vol. 2, IWA Publishing, 印刷中
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