研究概要 |
2001年9月-2005年6月の北京市のPM10質量濃度の平均値は157±108μg/m^3(n=1130)であった。これは北京市環境保護局が公開している市内13地点のPM10濃度の平均値(2001年9月-2005年6月、153±90μg/m^3, n=1334)とほぼ一致した。また両者の経日変動も一致したことから、本研究におけるPM10濃度の観測結果は、北京市内全域の値をほぼ代表していると言える。北京市における測定全期間のエアロゾル中微量金属及び水溶性イオン成分濃度は、測定された全成分について北京市は東京よりも高濃度であり、特にCa, As, Seについては10倍以上、またMn, Co, phについても5倍以上高濃度であった。 中国北京市におけるPM10およびエアロゾル中化学成分について、それぞれの濃度の長期的動向を調べるために、最小二乗法を用いて統計的に回帰式を決定し、2001年3月から2005年3月までの各成分濃度の年変化率を求めた。PM10濃度はこの期間においてほぼ横ばいであったのに対し、Cu, Zn, As, Cd, Pbといった人為起源と考えられる微量金属成分濃度は16.8-36.7%という極めて高い年率で増加していることが判り、近年および今後の重金属汚染の深刻化が懸念される結果となった。 2003年9月〜2005年10月の期間における北京市のエアロゾル中PAHs(多環芳香族炭化水素類)濃度の平均値は134±215ng/m^3(n=89)であった。また、北京市において暖房が許可されている期間(11月15日〜翌年3月15日)のPAHs濃度(305±279ng/m^3, n=33)は、非暖房期(33±28ng/m^3, n=56)と比較して9.3倍と顕著に高くなった。この傾向は暖房期における北京市での石炭使用量の増加を反映していると考えられる。
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