研究課題
中国北京市では2008年五輪開催に向けた都市改造の最中であり、すでに高濃度である大気粉塵がさらに増加する危険性がある。従って大気粉塵の発生源を明らかにし対策を進めることが重要である。本研究では中国北京市清華大学において大気粉塵試料を1日ごとに採取し、微量化学成分の分析を行った。北京市における微量金属成分濃度は、全ての成分において東京都の濃度を上回り、特にヒ素に関しては25倍を超える高濃度であった。回帰分析を用いて微量金属濃度の長期的動向を調べた結果、2001年3月〜2006年2月の期間において、銅・亜鉛・ヒ素・カドミウム・鉛といった石炭燃焼由来の重金属濃度が年率4.9%〜19.8%の割合で増加していることが判った。さらに、CMB(Chemical Mass Balance)法を用いて大気粉塵の発生源の推定を行ったところ、約8割の大気粉塵が人為起源であり、特に石炭燃焼が全体の3〜5割を占める主な発生源であることが判った。北京市における総多環芳香族炭化水素類(ΣPAHs)濃度は東京都と比べると数十〜数百倍高濃度であった。また、暖房期におけるΣPAHs濃度は非暖房期に比べて10.7倍高くなった。この原因は主に一般家庭における石炭燃焼の影響であると考えられた。大気粉塵中PAHs濃度測定結果を基にPMF(Positive Matrix Factorization)法を用いて大気粉塵中PAHs発生源の推定を行った。PAHsの主な発生源として石炭燃焼、廃棄物燃焼、木材燃焼、自動車排気が考えられた。暖房期、非暖房期における各発生源からの寄与率を求めると、暖房期では石炭燃焼、廃棄物燃焼、木材燃焼からの寄与が合計約70%となり、これらの発生源からPAHsが多量に放出されていることが推定され、石炭、廃棄物、木材が一般家庭において冬季の暖房用燃料として使用されていることが示唆された。
すべて 2006
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