東シベリア地域イルクーツク市近郊のサンプリング地点において、10ライングローバルサンプラー(GS10-GP)により、暖候期に大気汚染物質(二酸化硫黄、エアロゾル)を高時間分解能(1日単位)の連続大気汚染物質捕集により測定し、その局地的な大気環境インパクトを求めると同時に、バックトラジェクトリー計算による解析により越境大気汚染として日本に及ぼす影響を明らかにする事を目的として、本年度もロシア連邦科学アカデミーシベリア支所、湖沼学研究所が大気汚染物質のサンプリングを行い、化学分析も終了した。 9月下旬に日本環境衛生センター・酸性雨研究センター:大泉が別予算で訪露して、サンプリング現場を視察すると同時に研究打ち合わせを行った。イルクーツク地域は2004年7月のハリケーンで倒木が多数生じ、森林火災の危険性が高まった。2005年には6月中旬までにイルクーツク地域で約3万haの森林火災が生じた。 フィルターの化学分析結果によると8月2日にエアロゾル中のイオン種濃度がピークを示した。硫酸イオンは4ug/m^3を越え、カリウムイオンも0.37ug/m^3と非常に濃度が高く、森林火災によるものの可能性があるが、1日のみ高濃度であったので、ごく小規模のものであると推測される。硫酸イオンとして10ug/m^3を大幅に越えるものは観測されていないために、日本への越境大気汚染の可能性は全くなかった。観測地点の大気環境評価という点では、炭酸塩濃度が高いという点以外は、国内地点と同等レベルであった。
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