研究概要 |
東シベリア地域における森林火災による大気汚染物質を高時間分解能(1日単位)の連続大気汚染物質捕集測定により測定し、その局地的な大気環境インパクトを求めると同時に、越境大気汚染として日本に及ぼす影響を明らかにすることを研究目的として、イルクーツクにあるロシア連邦科学アカデミーシベリア支所、湖沼学研究所との共同研究として、緊密な連携の下、観測を行った。毎年現地訪問による研究内容打ち合わせを行った。 2005年8月2日にエアロゾル中のイオン種濃度がピークを示した。硫酸イオンは4ug/m^3を越え、カリウムイオンも0.37ug/m^3と非常に濃度が高く、森林火災によるものの可能性があるが、1日のみ高濃度であったので、ごく小規模のものであると推測される。硫酸イオンとして10ug/m^3を大幅に越えるものは観測されていないために、日本への越境大気汚染の可能性は全くなかった。 2006年度の「東アジア酸性雨モニタリングネットワーク」による二酸化硫黄の濃度測定をロシアからの移流の可能性があるサンプリング地点(利尻、竜飛岬、佐渡関岬)に関して解析した。4月に6ppbvを越える高濃度が、佐渡関岬のみで観測されたが以降は6月いっぱいまで低濃度であった。7月-9月は3地点とも二酸化硫黄濃度は低かった。12月から3地点に共通する高濃度現象が観測された。1月-3月にもスパイク状の高濃度が観測され、5ppbvを越えることが3回あった。米国NOAAのシステムを利用した後方流跡線計算結果によると12月22,23日は一部ロシア上空を気塊が横切っていたが、森林火災の影響かどうかは明らかではなかった。 今回の観測でロシアの森林火災による大気環境への影響を明確に捉えることは出来なかったが、東シベリア地域における大気環境観測のキャパシティビルディングが出来た。今後も地球温暖化の加速により森林火災の危険性が高まるシベリアにおいて、大気環境観測の体制が整った事は大きな成果である。
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