研究課題/領域番号 |
16404021
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
能勢 義昭 東京大学, 生産技術研究所, 助手 (10114604)
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研究分担者 |
浦 環 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (60111564)
浅田 昭 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (60323648)
小島 淳一 (株)KDDI研究所, プロジェクト・リーダー(研究職) (50416575)
柳澤 政生 早稲田大学, 理工学部, 教授 (30170781)
石井 和男 九州工業大学, 生命体工学研究科, 助教授 (10291527)
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キーワード | 小型歯クジラ類 / カワイルカ / 揚子江カワイルカ / ガンジスカワイルカ / 鳴音 / クリック / 高周波数 / 音響解析 |
研究概要 |
水中生物の生態観測は、観測者である人間が容易に水中に滞在できないことなどから困難な作業である。水槽で飼育できる小型生物ならばまだしも、鯨類のような生物の観測は難しく、その発見すら容易でない。しかし、現代の電子技術、ブイ技術、自律型海中ロボット技術および通信技術の進歩は、そこにこれまでにない新しい手法を導入・構築することを可能とした。本研究では、水中生物が発する音に着目し、これを利用して生物を同定し、それを自動的に観測できる音響装置を用いたシステムを研究・開発し、実際の調査観測によりその有効性を検証していくことを目指す。具体的なターゲットは、80〜160kHzの高周波数の鳴音を持つ小型歯鯨類、特に近年の都市化や環境汚染により絶滅が危惧されている中国の揚子江カワイルカ、インドのガンジスカワイルカなど世界の河川に棲息するカワイルカ類である。研究2年目となる2005年度は、2004年度に製作した音響測位装置を用いてカワイルカ同様の高周波鳴音を有するスナメリの音源位置を求める試験を銚子沖でおこないデータを収集、現在解析を進めているが、スナメリは極めて用心深い性質を有しており、人の姿を見かけると素早く逃げ去ることが分かった。つまり、初探による発見から装置を投入する方法ではデータ取得が難しい。スナメリについては、無人自動観測ブイを棲息海域に設置するなど、無人観測により研究を進める必要がある。次に揚子江カワイルカについては、現在、ほぼ絶滅に近い状態にあるため、その観測は容易ではない。このため、同様の高周波数を有するカワイルカであるガンジスカワイルカを当面のターゲットとして観測を進めることにより、揚子江カワイルカにも応用できる観測システムの構築を目指すことにした。そのため、2005年度はインド工科大学デリー校やWWF-Indiaと協議、まず、インド側と合同でインドオリッサ州 のチリカ湖に棲息する、10kHz〜120kHz程度の周波数域を有する小型歯クジラ類であるカワゴンドウの観測をおこなうことになり、2006年1月に開発した音響測位装置を用いて実験をおこなった。本実験では、多くのクリック音データを取得しており、これまでの解析により数頭のカワゴンドウの方位と距離情報を得ている。また、インド実験に先立ち、タイの水族館で飼育されているカワゴンドウの鳴音データを比較データとして取得している。 今回の実験の成果がインド側に評価され、2006年度にはオリッサ州の河川で保護された一頭のガンジスカワイルカの観測実験をその保護水域においておこなうことが決まっている。このため、さらなる解析を進めるとともにガンジスカワイルカの音響データ取得および音響測位実験に向けて装置の改造および新たなソフトウェア構築を進めている。
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