2007年も日本海を中心にエチゼンクラゲが大量出現し、これで2002年以降ほぼ毎年大量出現が連続した。本種の大量出現による漁業被害は、中国や韓国からも報告されるようになり、エチゼンクラゲ大発生は東アジア縁海域全体の問題となっている。今年度は下記の研究実績を得た。 (1)黄海、東シナ海のエチゼンクラゲの目視調査 下関-青島、上海-大阪間を航行する国際フェリーのデッキから、航路上に出現するエチゼンクラゲを計数調査した。本種は6月中旬から出現し始め、7月上旬には黄海全域に分布し、また出現密度は最高となった。しかし、8-9月は本邦での出現量は極めて少なく、例年より遅れて10月下旬から大量に出現し始めた。これらのことから、2007年度のエチゼンクラゲ群の主体は韓国沿岸を日本海沖合に向かって輸送されたと考えられた。本フェリー調査によるデータは、本邦沿岸域の大量出現を早期予測するために不可欠である。 (2)エチゼンクラゲ無性生殖過程の解明 本種のポリプによる無性生殖速度は、ミズクラゲに比較すると1-2オーダーも低く、水温23℃で最高0.04podocysts polyp^<-l>d^<-1>であった。ポドシストは水温5-31℃、塩分5-33の範囲で生残し、さらに有機物に富んだ泥中でも生残可能であったことから、高い環境耐性を有し、少なくとも2-3年間は生存可能であった。ポドシストの一斉出芽が大量発生を引き起す要因となる可能性が指摘される。 (3)ミズクラゲポリプの貧酸素耐性と天敵生物による捕食 ミズクラゲのポリプは貧酸素条件下(>3mgO_2L^<-1>)でも無性生殖能力があった。エビスガイ、クモガニは特異的にポリプを捕食する天敵生物であることが明らかとなったが、これらは貧酸素条件下では生残は不可能であった。富栄養化などに伴う海底の貧酸素化がミズクラゲの大量発生をもたらす一因となることが明らかとなった。
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