研究課題
基盤研究(B)
低地フタバガキ林の「一斉開花」とは,数年に一度林冠に優占するフタバガキ科樹種や、そのほかのさまざまな植物が同調して大量開花・結実する現象である.本研究では、マレーシア・ボルネオ島のランビル国立公園で蓄積されたデータを分析するとともに新たに調査を行い、一斉開花現象の詳細を記述し、一斉開花が動物に与える影響について検討した。一斉開花の至近要因については、低温説が有力であったが、1992年から2003年までの開花データを気象データとあわせて解析を行い、30日間で40ミリ程度の乾燥が開花を引き起こすことを示唆する結果を示した。また、開花規模と植物の繁殖成功の間には強い相関があり、これは送粉者や種子捕食者といった動物との関係によると考えられた。一斉開花に影響を受ける動物として、フタバガキ科の代表的な送粉者であるハムシ、熱帯を特徴づける送粉者、種子散布者であるコウモリと、主に種子捕食者である齧歯類について一斉開花との関連を調べた。ライトトラップで捕獲されたハムシの個体群動態の解析を行ったところ、訪花性ハムシ数種では開花期に著しく増加した種もみられたが、反応はさまざまで、確率的プロセスによる変動が大きいと考えられた。多くのハムシは非一斉開花期においてはそれと無関係に咲く花や新葉などを利用し個体群を維持していると考えらた。小型哺乳類についてベイトトラップで密度の推定を行い、開花・結実フェノロジーとの関連を調べてみたところ大きな増減があり、それはほぼ結実量で説明できることがわかった。花蜜食コウモリについては、カスミ網を用いて2年間定期調査を行った。多くの花蜜食コウモリは果樹園など人の手が入ったハビタットに主に生息していることがうかがわれ、一斉開花になると周辺から原生林への移動が起こるのかも知れない。これらのデータから、それぞれの動物群の一斉開花への応答の違いが明らかになった。
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Biotropica (in press)
Raffles Bulletin of Zoology 55
ページ: 389-395
American Journal of Botany 93
ページ: 1134-1139