研究課題/領域番号 |
16405007
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
仲岡 雅裕 千葉大学, 大学院自然科学研究科, 助教授 (90260520)
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研究分担者 |
近藤 昭彦 千葉大学, 環境リモートセンシング研究センター, 教授 (30201495)
宮島 利宏 東京大学, 海洋研究所, 助手 (20311631)
向井 宏 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 教授 (00013590)
鈴木 孝男 東北大学, 大学院生命科学研究科, 助手 (10124588)
野島 哲 九州大学, 大学院理学研究院, 助教授 (30112288)
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キーワード | 生物群集 / 海草藻場 / 生態系機能 / 生物多様性 / タイ南西部 / 広域空間比較 / ベントス / 物理化学的プロセス |
研究概要 |
タイの熱帯海草藻場を対象に、自然および人為的な環境ストレスが海草藻場の生態系機能と生物多様性に与える影響を解明することにより、海草藻場の生物多様性を指標とした沿岸生態系の機能評価の手法を開発する。この目的を達成するため、1.天然および人為的な環境ストレスの異なる複数の海草藻場において、物理学的・化学的・生物学的特性の広域空間比較を行い、環境ストレス、生物多様性、生態系機能の3者間の関連性を解析する。2.タイ南西部ラノン地方の藻場を集中観測拠点として、海草藻場生態系の時空間的変動を定期的に観測し、環境ストレスの変化が、生物多様性の変化を通じて、海草藻場の生態系機能に与える影響を実証的に評価する。更に、3:2004年12月にインド洋一帯で発生した津波によるカタストロフィックな天然撹乱が生物多様性の変化を通じて、生態系機能に与える影響を評価する。 本年度は2006年8月および12月に現地調査を行った。まず、海草藻場の広域比較では、昨年度に引き続き、津波の被害の大きかったタイ南西部ラノン地方の海草藻場、および津波の影響が比較的軽微であったトラン地方の海草藻場において、海草の分布・種構成、動物類、および環境パラメータを同一方法で比較調査した。また、雨季と乾季における海草藻場の生産性の比較および水質、底質の変動様式の比較解析を行った。その結果、津波による著しい撹乱を受けた藻場では海草の回復が2年経過しても進まず、さらに津波の撹乱を免れた場所でも現存量の減少が確認された。このことより、津波の撹乱と、その後生じたより局所的な撹乱が相互作用して、複雑な挙動が生じている可能性が指摘された。また、シルトクレイ含有率の増加に伴いウミショウブの生産性が増加する一方、他種の海草類が減少することから、シルト流入に伴う競争種の減少がウミショウブの生長に有利に作用していることが示された。更に、海草藻場の動物群集の解析により、海草の種多様性の空間変異が生産性および安定性の指標として利用できることが判明した。
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