研究課題
本年度は、マレーシアランビルヒルズ国立公園における調査を3つの観点からおこなった。1)シロアリの多様性と物質分解林床部から樹冠部までのシロアリ移動能力を調べた結果、蟻道による低速度の移動は、30%以上の木において観察された。その殆どは木材を利用する種であった。また4種のコウグンシロアリは、それぞれで生息域及び行動範囲を棲み分けていることが明らかになった。これらシロアリ群集の食性を明らかにするために、シロアリの採集を行い、窒素炭素安定同位体比の分析を行った。その結果、地衣類を摂食するコウグンシロアリ(Hospitalitermes hospitalis)<落ち葉を摂食するシロアリ(Longipeditermes longipes)+木材を利用するシロアリ(Microcerotermes sabahensis)<土壌有機物を利用するシロアリ(Dicuspiditermes nemerosus)の順に窒素同位体比が高くなっていた。一般により腐朽が進んだ有機物を摂食しているシロアリほどその体の窒素安定同位体比は高くなることが分かっている。今後、コロニーの繰り返し数を増やすと共に、対象とするシロアリの種数を増やして分析を行い、シロアリの食性と分布の関係を明らかにする予定である。2)コウグンシロアリの防衛及び同巣認識機構コウグンシロアリ2種を使ってその行列形成メカニズムを化学的に調べた。ワーカー、ソルジャーの抽出物をシリカゲルカラムにかけ溶離液の極性に基づく分離を行い、それぞれの物質ごとに道しるべフェロモン活性、行列規制フェロモン活性を調べた。その結果、兵蟻が分泌する分子量の小さい揮発性物質が職蟻の行列の形成をコントロールしていることが分かった。この物質を「囲い込みフェロモン(仮)」と命名し、さらに詳細な研究を行う。3)アリとゴキブリ、着生植物の相互作用本調査地でフタバガキ科の林冠木に着生するシダの一種の基部に、樹上性シリアゲアリと共生するゴキブリを発見した。樹上より、着生シダを採取しコロニー構成を調査した結果、個体数にして2〜4割をゴキブリが占めることが分かった。これは好蟻性昆虫としては類を見ない構成比の高さである。また、体表成分を分析したところ、このゴキブリは宿主アリを化学擬態していないことが明らかとなり、一般に知られているアリの巣仲間認識機構とは異なる機構の存在が示唆された。
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Proceeding of International Symposium on Forest Ecology, Hydrometeorology and Forest Ecosystem Rehabilitation in Sarawak (In press)
Sociobiology 45巻3号
ページ: 671-678
Proc.6th Int.Wood Sci.Symp.
ページ: 35