研究課題
永久凍土の上に成立したシベリアのカラマツ天然林のデータ解析によると、この森林では、生態学の常識に反して、個体密度が小さくなると現存量が一定値に収束してしまう傾向がある。永久凍土のために、夏の間融解する表層土壌の厚さが限られ、土壌養分の不足が制限要因となって地上部現存量が一定値以上に増えられない、と私たちは考え、これを森林の「バイオマス制限仮説」と呼ぶ。本研究の目的は、この仮説をシベリアのカラマツ林で検証することにある。今年度はこれまでの研究に引き続いて窒素肥料を永久調査区内に散布し、カラマツ個体の成長、土壌呼吸速度、細根動態測定などを行った。昨年度と同様、2種類の濃度で窒素肥料の散布を行った。施肥の時期は7月下旬だった。施肥が土壌呼吸速度に及ぼす影響、および細根動態に及ぼす効果の測定をおこなった。また、カラマツ天然林で広く観察される個体枯死のパターンを理解するため、枯死木、生育木の両方のサンプルを多数採集し、年輪解析をおこなった。今年度は研究最終年度なので、研究成果を書物として出版する作業を進めている。"Permafrost Ecosystems: Siberian Larch Forests"というタイトルの本をオランダのSpringer Verlag社から出版する予定だが、5パート、25章からなる約500ページの本の原稿が現在ほぼ完成した。平成20年度中に出版される予定である。[研究協力者]01ga A. Zyryanova(植生遷移解析、Sukachev Institute of Forest); Eugene A. Vaganov(凍土環境と森林構造発達解析、Siberian Federal University); Ross W. Wein(出版予定の書籍の編集、University of Alberta, Canada)
すべて 2008 2007
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Theoretical and Applied Climatology (On-Line publication)
ページ: DOI 10,1007/S00704-007-0337x