研究課題/領域番号 |
16405011
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
鈴木 仁 北海道大学, 大学院地球環境科学研究院, 助教授 (40179239)
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研究分担者 |
玉手 英利 山形大学, 理学部, 教授 (90163675)
土屋 公幸 東京農業大学, 農学部, 客員教授 (30155402)
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キーワード | 生物地理 / 分子系統 / 核遺伝子の塩基配列 / 種の多様性 / 遺伝的多様性 / 第三紀後期の環境変動 / ハツカネズミ属 / クマネズミ属 |
研究概要 |
ネズミ亜科は500種以上をかかえ、主にユーラシア・アフリカの亜熱帯・熱帯域に分布し、森林から草原といったさまざまな生態学的環境に生息するが、例外的にアカネズミ属(Apodemus)は温帯域の森林で繁栄している。彼らの系統分化の時空間の展開の歴史を分子系統学的な手法で追うことで、分類学的再編成や種分化機構の解明に有用であるばかりでなく,地質学的および生物学的古環境の推察に大いに役立つものと思われる。これまでミトコンドリアDNAや核遺伝子をマーカーとして用い、A.latrounm、A.cherivieri、A.dracoを含む15種を解析している。その結果、アジアの10種のうち、7種はすでに第三紀後期の700-500万年前に系統の分化を起こしていることが示唆された。日本の固有種2種アカネズミとヒメネズミを含め、アジアの各地域に固有の系統が息づき、アジア大陸は日本列島を含め、かなり古い時代より、その温帯域の森林環境が今日まで大きく破壊されることなく維持されてきたものと推察できる。核遺伝子を指標として種内の遺伝的多様性をみてみると、ヒメネズミの核遺伝子IRBPの1152塩基対領域では約1%もの塩基多様度を示すなど、顕著なレベルの遺伝的多様性があった。一方、ネズミ亜科の主要なグループのクマネズミ類(Rattus属および近縁な属)においてもインドネシア島嶼および東南アジア大陸部において、700-500万年前以降に多様化をはかり、オーストラリア大陸を含め、アジア・オセアニア域に広く展開したのは300-200万年前以降の進化的に短い時間の中で大陸間移動および100種以上にも及ぶ高度の種の多様化を図ったことが明らかとなった。
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