研究課題
適応放散的種分化とは、単一祖先から、周辺のさまざまな環境に適応し、形態や生態学的特徴が分化した種が進化していく現象を指す。この現象は通常、比較的短時間で起こり、少数の突然変異による遺伝的変化によって、大きな形態、生態、生理形質の分化が生じたと推定されるため、種分化のモデル系として注目されている。適応放散的種分化は通常、大洋島など、新たな生育地が形成された場合に起こる。本研究の対象地域に選んだニュージーランドは大陸から離れた太平洋上に位置する。また、高緯度に位置するため、特に南島は氷河期には大部分が氷河に覆われていたと考えられる。このような環境から、氷期以後に大きな裸地が形成され、その結果、大規模な適応放散が数多くの生物群で起きている。本研究では、ニュージーランドにおいて大規模適応放散を起こしている被子植物数群において、種間や集団間の、 1)詳細な系統解析、 2)集団遺伝学的特性の解析、 3)細胞学的解析、 4)生態学的特性の比較を通して、適応放散的種分化過程の詳細とその種分化機構の解明を行う。本年度は、昨年度に続き、キク科のCelmisia属、シダ植物コケシノブ科のサンプリングとその種分化・系統解析を種数を増やして行い、より解像度の高い結果を得た。また、南半球に分布し、ゴンドワナ植物要素として有名なナンキョクブナ属において、その寄生生物についての調査を行った。最終的な結論は、昆虫類、地衣類の同定結果を待たないといけないが、ニュージーランドでのナンキョクブナ属の適応放散と平行してこれらの生物群での種分化が起きたことを示唆する結果が得られている。
すべて 2006 2005
すべて 雑誌論文 (4件)
Gene 366・1
ページ: 256-265
Plant Cell Physiol. 46・9
ページ: 1472-1276
Acta Phytotax. Geobot. 56・2
ページ: 141-162
Am. J. Bot. 92
ページ: 97-104