研究課題
基盤研究(B)
植物病原菌が「いつ・どこで宿主植物に対する病原性を獲得したか?」、また、「それ以降現在までどの様にして病原性を進化させてきたか?」という植物病理学における最大の疑問のひとつに答えるために知見を集積することを目的とした。栽培植物の育種や伝播にもかかわるこの疑問を解き明かすことで、植物-病原菌の共進化に関する学術的な知見を得るととともに、食料安定生産を目指した病害防除技術の確立のための基礎的知見を蓄積できることが期待される。本研究では、トマト(Lycopersicon)属を対象植物、主にFusarium oxysporum f. sp. lycopersici(萎凋病菌)を対象病原菌とした。トマトの育種・伝播の歴史に基づき、関連する海外諸地域のフィールドで調査を行った。具体的には、トマトの栽培化が起きたメキシコ、一部野生種が自生するエクアドル、および、欧州におけるトマト近代育種発祥の地とされるイタリアのナポリ周辺をフィールドとした。計6回の調査で採集した野生種、移行期及び栽培トマト植物組織、及び土壌からF. oxysporumを分離、過去にチリ自生の野生種からの分離株と併せ、計237株を供試した。いずれの菌株も食用トマトに病原性を示さず非病原性であると判断した。これらの株のrDNAIGS領域に基づく分子系統解析を行った。野生種分離株はいずれもトマト萎凋病菌のクラスターに入らなかった。メキシコの移行期トマトからの分離株のうちで、萎凋病菌クラスターに入るものがあった。この結果は、メキシコにおけるトマト栽培化以降に、トマト萎凋病菌の祖先にあたる、トマトに定着性を保持する非病原性F. oxysporumが出現したこと、その後この非病原性菌が病原性を獲得し、萎凋病菌が出現したこと、定着性を持つ非病原性菌および病原菌ともに、トマトの育種・伝播を通じて世界的に拡大したこと、を示唆した。
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