研究課題
基盤研究(B)
ハダニ類は、かつては化学薬剤を多用するいわゆる先進国に多発する害虫であったが、最近では東南アジアなどでも被害が顕著になり、また農産物の国際的な流通により、分布域が拡大する傾向がある。本研究では、東・東南アジアに分布拡大が見られる2種のハダニ(ナミハダニとカンザワハダニ)を対象に、休眠性という適応的な生態情報とCOI塩基配列という分子情報を用い、2種間および種内の地域個体群間の変異を調べ、分布拡大のプロセス、系統分化などを調べた。わが国のナミハダニの休眠性には地理的勾配がみられ、変異が大きく、南に下がるにつれて休眠率が低くなり、暖地の個体群ではきわめて休眠性が弱いことが知られる。東・東南アジアにおける本種の発生は局地的であったが、いずれの地域でも、わが国暖地と同様に休眠性がきわめて弱かった。本種は地中海地域を起源とし、その後、世界中に短期間に一気に分布拡大したとされる。本研究におけるCOI遺伝子配列の解析からもこのことが確認され、日本、台湾、韓国、タイなどの個体群はすべて同じクレードに含まれていた。一方、わが国のカンザワハダニの休眠性は、鹿児島以北の個体群はいずれも90%以上の休眠率を示した。しかし沖縄個体群は休眠性がきわめて弱く、また台湾の個体群では休眠率に大きなばらつきが見られた。タイ北部高地の個体群の休眠性は弱かったが、逆に熱帯域のマニラ近辺、東ジャワの個体群はいずれも高い休眠性を示した。このように、本種の休眠率の変異は緯度との関連では説明できなかった。休眠性が除去されるに十分な時間が経過したにもかかわらず、休眠性が依然として維持されており、本種の休眠性が必ずしも自然選択の対象とはなっていないことが示唆された。COI塩基配列から、本州以南の個体群はいずれもCOIハプロタイプの多型が貧弱で、わが国南部の個体群と塩基配列にはほとんど違いがなかった。このことから、本種が東南アジアなどに分布を拡大したのは比較的最近であると考えられた。一方、北海道北部の個体群には多様なハプロタイプが確認されたことから、本種の起源は北方にあり、そこを基点に南に分布拡大したと推察される。
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