研究分担者 |
磯部 作 日本福祉大学, 社会福祉学部, 教授 (90288499)
島 秀典 鹿児島大学, 水産学部, 教授 (00253914)
家中 茂 鳥取大学, 地域学部, 助教授 (50341673)
山下 東子 明海大学, 経済学部, 教授 (50275822)
赤嶺 淳 名古屋市立大学, 大学院・人間文化研究科, 助教授 (90336701)
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研究概要 |
3か年にわたり,東南アジアにおける沿岸域資源の持続的利用を実現しようとする動きを,漁村の多面的機能と関連づけて,タイとフィリピンを中心に調査した。フィリピンのパナイ島バナテ湾域では,commumty-based型資源管理(CBRM)が新たな発展をみている。Co-management(CM)型組織が沿岸域エコシステムに対応しつつ,社会経済的環境にも適応した組織になっていた。タイでは,住民参加型資源管理が広く認知され,CMは,地方分権化に対応した制度として確立されつつある。東南アジアでは,CBRMは「下からの運動」として広がってきた。中央政府によるトップ・ダウン型の資源管理が分権化される過程で,「中間媒体」とでも呼べる資源管理組織ができ,それとCBRMのような参加型が合同する,Co-management(CM)型が増えている。政府・自治体行政主導で進む資源管理の分権化のスピードが速くなった結果,と言える。地域にねざした資源利用秩序ができあがる過程で,水産業がもつ生産者的視点と,食料資源として沿岸水産資源を消費する生活者的視点が融合し合い,それらが新しい物質循環をつくりだしている。それが,沿岸水産資源利用をめぐる多面性に他ならない。漁村の多面的機能の増進活動が,アジア海域社会にとっては有効な地域戦略であることは明らかである。 本研究は次のような社会貢献を果たした。タイでは,住民参加型・地方分権化の資源管理組織を実現していく道筋を提案した。フィリピンでは,調査地域におけるわが国の技術協力プロジェクトの形成に寄与した。沖縄・日本での研究は,漁村・水産業がもつ多面性を軸に,どのように地域振興寮はかるかをテーマに,沖縄県庁と共同で地域シンポジウムを開催した。今後は,津波災害を受けたアジア海域社会がどのように多面的機能を回復し,維持増進させていくかが,研究課題となる。
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