本年度はインド国立馬研究所を訪問し、現地調査のための共同研究協定を締結した。昨年インドでは人のトリパノソーマ感染例が2例報告された。同国には人トリパノソーマ症は存在しなかったことから、WHOが調査に乗り出し、トリパノソーマエバンシの初の人感染例であることが明らかとなった。17年度以後の本研究計画でもトリパノソーマエバンシの新興人獣共通感染症としての側面を疫学調査から明らかにしていく予定である。 我々が既に確立しているトリパノソーマ特異的LAMP法を実験感染豚を用いて評価した(タイ国共同研究者との共著でVeterinary Parasitologyに印刷中)。その結果、従来の血液標本顕微鏡検査法、マウス接種試験、PCR法と比較してLAMP法が同等かそれ以上の感度と正確性をもってトリパノソーマ感染を検出できることが明らかとなった。LAMP法には特別な装置が必要ないため、次年度以降の疫学調査に非常に有用である。そのほかにもトリパノソーマのリボソームPO蛋白質がトリパノソーマ感染診断用抗原として優れていることを発見し、組換えPO抗原を大量発現し、それを用いたELISA法によるトリパノソーマ血清診断法を確立した。本ELISA法については今後の調査でさらに実用性を評価検討する予定。 17年度はフィリピン(ルソン島)フィリピン大学ロスバニョス校およびインド国立馬研究所に赴き、家畜血液由来DNAの収集と疫学調査を行う予定である。
|