研究課題
基盤研究(B)
中国東北地方の悪性腫瘍の発癌要因の学術調査として、藩陽の中国医科大学病理学教室で診断された鼻の悪性リンパ腫を検討した。この悪性リンパ腫の大多数はEpsten-Barr virus(EBV)感染を示す鼻型NK/T細胞性リンパ腫であった。このリンパ腫は細胞毒性顆粒(TIA-1)とCD56が陽性であり、それに加えてCD3εが陽性であるとされるが、その大多数はNK/T細胞が陽性であるとされるLAT-1が陰性であった。また、このリンパ腫は壊死傾向を示すことから、このリンパ腫細胞の細胞死を免疫組織化学的に検索すると、細胞死の亢進を反映してスカベンジャー受容体(CD204)陽性マクロファージが多く介在し、抗cleaved caspase-3抗体で標識されるアポトーシスは僅かであり、抗beclin-1抗体の酵素処理超高感度染色で標識される自己貧食細胞死が顕著であった。2001年から7年間に診断された134例余りの鼻の悪性リンパ腫を検討したところ、鼻腔でEBV感染を示す多数の鼻型NK/T細胞性リンパ腫と少数のB細胞性リンパ腫の咽頭に対して有意な発病が観察される一方、少数の微小扁平上皮癌では、鼻腔ではEBV感染を示さない癌が、咽頭ではEBV感染を示す癌が発生していた。また、この地方では、皮膚での鼻型NK/T細胞性リンパ腫の発症は観察されずに、CD30陽性皮膚原発リンパ増殖病変の多発が示唆された。これらの所見は、中国東北地方での鼻と咽頭の悪性腫瘍の発生に、EBV感染以外にAozasaらが報告している殺虫剤等の外来因子の関与が示唆されると共に、EBV感染・再活性化と外来因子の暴露状況と鼻腔と咽頭で異なる炎症環境とそこに出現する特異な糖とその糖を認識するNK/T細胞の浸潤が鼻腔と咽頭で異なる悪性腫瘍の発生状況を招いていることが示唆された。今後、これらの因子の検索を進める必要がある。
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