スリランカはこれまでリーシュマニア症の浸淫地とは考えられていなかった。ところが数年前より皮膚型リーシュマニア症患者の急増が注目されはじめたが、当初輸入例と考えられていた。本年度は、スリランカ国内のAnuradhapura県、Kurunegala県、Matale県において現地調査を行い、渡航暦がなく臨床症状よりリーシュマニア症が強く疑える患者を対象にinformed consentを得た上で聞き取り調査および検体採取を行った。病変は顔、手、足の皮膚露出部に多く、直径5〜20mm程度の水泡状あるいは結節状の丘疹が多く、また丘疹中央部に潰瘍を認める場合もあった。皮膚型リーシュマニア症を疑える35名に対し患部のニードルバイオプシーを行い、得られた生検材料の一部を血液寒天培地にて培養した結果、11名の生検材料よりリーシュマニア原虫を検出した。これら11名の患者が始めて丘疹を自覚してから4〜10ヶ月経過していた。これら11名中3名に所属リンパ節腫大を認め、1名には軽度の脾腫が認められた。さらにスリランカにおける病原原虫種を同定するために、患者から分離されたリーシュマニア原虫のミニエクソン遺伝子等の一部塩基配列を決定した。その結果、内蔵型リーシュマニア症の病原種であるとされているLeishmania donovaniと最も相同性が高いことを示し、スリランカにおいてL.donovaniを病原体とする皮膚型リーシュマニア症が浸淫していることを示唆した。
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