研究概要 |
平成16年から我々が行った調査により、皮膚型リーシュマニア症がスリランカにおいて浸淫していることを明らかにした。本年度は度航歴がなく、臨床症状より皮膚型リーシュマニア症が強く疑われた患者からinformed consentを得たうえで患者皮膚部のニードルバイオプシーを行い、NNN培地を用いた培養により検出されたプロマスティゴートのミニエクソン遺伝子、アクチン遺伝子について一部塩基配列を決定し、既知のL. donovani、 L. major等8種のリファレンス株と比較解析を行った。その結果ミニエクソン遺伝子の解析では、内臓型リーシュマニア症の病原種であるL. donovaniとPCR産物の泳動パターンが一致した。アクチン遺伝子の解析では946塩基中、スリランカ分離株はL. majorとは34塩基異なるのに対し、内臓型リーシュマニア症の病原種とされるL. donovani, L. infantum, L. chagasiとは0〜4塩基のみ異なり、予想されるアミノ酸配列においては100%一致した。したがってスリランカにおける皮膚型リーシュマニア症の病原原虫はL. donovani s.l.であることが示唆された。しかしながら内臓型リーシュマニア症の診断に有用なrK39抗原を用いたKalazar detect dipstick testではすべての患者が陰性を示した。これらのことは、スリランカにおける皮膚型リーシュマニア症の病原原虫種がL. donovani s.l.であるものの、病原性および抗原性において既知のL. donovani, L. infantum, L. chagasiとは異なることを示唆している。
|